蔵本−佐藤酒造 麹−麦麹  原料−大麦(裸麦)
価格−\2,489  購入年月 H19.7

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 このところ、ロックでいただいている。いつも芋焼酎を楽しんでいるのだが、「佐藤の黒」を造る蔵だから、どんな味わいのだろうかと興味をもって、味わってみた。
 蔵本のホームページでは「私たちは佐藤酒造の麦焼酎として仕込みに取り組み、麦の素材感や、やわらかさ、素直な甘さを表現いたしました」と紹介しているが、実際はどうなんであろうか。
蔵本−岩倉酒造場 麹−米麹・麦  原料−大麦
購入価格−\1,176(720ml)  購入年月 H19.4

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 いつも飲み慣れている芋焼酎とは、香りの広がりや質が全く違う。原料が違うのだから、違うのは当然なのだが、その違いにちょっとした、とまどいと驚きを覚える。口の中にかなり濃厚で香ばしく心地よい香りがぱっと広がってくる。この広がりと香りの強さは、芋焼酎ではないものである。蔵本が素直な甘さと紹介しているように、ほんのりとした甘さを感じることができるが、甘さより芳ばしい香りが勝っている。「兼八」「三段じこみ」の中では最も香りとこくを強く感じ、最も濃厚である。おそらく、濾過も弱めにしているのだろう。この香りは、やみつきになりそうだ。この香りを楽しみたくて、麦焼酎にはまる方も多いのだろう。ゆっくりと舌の上で転がすと、わずかながらアルコールの刺激感を感じる。 また、とろっとした感じを覚える。このとっろした感覚は佐藤黒麹でも感じたものである。蔵の水の影響が大きいのだろう。今後、アルコールの刺激感がなくなるようにより熟成を重ね、落ち着いた味わいを醸し出すことに期待したい。
 「月の中」で有名な岩倉酒造場さんが造る麦焼酎である。とある酒屋さんに「月の中」を探しに行った折、この「三段仕込み」が棚に置いてあったので購入してみた。
 商品名となっているとおり、一次仕込みは米麹、二次仕込みは麦麹を使い、さらに三次仕込みで米麹を使用し、三段階で仕込みをしているそうである。そして、三年間熟成させ、醸し出されたのものが「三段仕込み」である。ずいぶんと手間と時間をかけた1品である。
 師走に入って封をきった。このところ、「佐藤の麦」や「兼八」を楽しんでいる。どとらも麦焼酎である。さて、この「三段仕込み」ロックで味わった。グラスに三段仕込みを注いで、すぐに口に含んでみた。氷が溶ける間もないのだが、アルコールのピリピリとする感じがしない。口に含んだとたん麦の芳ばしい香りと心地良い柔らかな苦さが広がる。「佐藤麦」「兼八」と比べると、特有の香りを含んでいる。麦の芳ばしさに併せて、懐かしく癒される香りである。檜の香りのような森林の中にいるような感じである。佐藤麦に比べると、芳ばしさや麦のもつ甘みは佐藤の麦の方がより強く感じる。「三段じこみ」は「佐藤の麦」、「兼八」の中で最も甘みを感じない。しかし、アルコールの刺激感がないので、甘みがなくてもとても、すんなりとのどを通っていく。ここらは、やはり3年の時を費やした恩恵であろう。試しに4合瓶で購入したのだが、次は1升瓶で購入し、時々、芳ばしさと併せた特有の香りを楽しみたい。
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蔵本−四ッ谷酒造 麹−麦  原料−大麦
購入価格−\2,310  購入年月 H19.12

 本当にやっと入手することができた。残念なことに福岡市やその周辺で正価で市販している酒屋さんを知らない。あっても抱き合わせで、単品での購入は難しい。今回やっとの事で遠方の酒屋さんで単品、正価で購入できた。それもその酒屋さんに4度通っての購入である。いつもふられて、次回こそはと思いを寄せての購入であった。麦チョコのような香ばしい香りがするという「兼八」開栓が楽しみだ。

 やっと開栓することができた。というのも初回の購入は4合瓶であったが、今回は一升瓶で「兼八」を購入することができたので、安心して味わうことができる。
 いつものように、ロックで味わった。はだか麦の香ばしい香りが広がる。舌の上で転がすと芳ばしさと同時にほのかにバニラのような香りが混じってくる。このバニラのような香りが麦チョコのチョコと表現されているものなのか。アルコールの刺激感もなくするするとのどを通っていく。とても優美である。上質な感じがする。さすがに評判だけのことはあると納得した。これは、旨い。また飲んでみたい。現在、もう1本一升瓶が未開栓であるが、もう1本入手したい。ところで、「兼八10年古酒」というのがあるそうだが、これまた1度は飲んでみたいが、入手できないだろう…。
蔵本−四ッ谷酒造 麹−麦  原料−大麦
購入価格−\1,955  購入年月 H19.5
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宇佐麦は「兼八」を造る四ッ谷酒造のレギュラー焼酎である。「兼八」はとても入手しづらいが、「宇佐むぎ」はいつでも入手できる。
いつものように、ロックで味わってみた。ついつい「兼八」の味わいを思い浮かべ比べてしまう。「兼八」は口当たりよく、豊かに麦の香りと芳ばしい風味が広がったが、「宇佐むぎ」では、「兼八」のように濃厚な芳ばしさや香りを感じないが、軽やかな麦の香りを楽しめる。
さわやかで淡麗といってもよいだろう。ロックで楽しんでいるのだが、すぐに口に運ぶとアルコールの刺激感を覚えるが、氷が溶けてくるとすっとする感じがなくなり飲みやすくなる。軽い味わいなので飲み飽きない1本である。私的には、もう少し香りやこくに個性がほしいところである。しかし、軽くてさらっとしていることから食前や食中に適している。
5
蔵本−合資会社山崎本店酒造場 麹−麦麹
原料−大麦
 この「かわせみ」は長崎に行ったお土産にと頂いたものである。しばらく保管していたが、最近、麦焼酎のすばらしさに開眼し、思い出したように開栓した。
 この「かわせみ」をネットで調べてみたが、情報があまりない。地元長崎を中心に取り扱われている品のようである。
 「かわせみ」を造る山崎酒造場は清酒やリキュールなどを手広く造る蔵で百年以上の伝統をもつ蔵であるそうである。
 いつものようにロックで味わった。麦の芳ばしさがほんのりと鼻から抜けてくる。「佐藤の麦」や「兼八」のような濃厚な味わいや香りでなく、ほのかに感じるものである。のどをゆっくりと通すと、芳ばしさと共に麦のもつ自然な甘みも感じることができる。そして、わずかであるがアルコールの刺激感を感じる。味わいは、軽くほのかであるが麦の香りを楽しめる。軽めの味わいを好む方にはお勧めの1本である。
6
蔵本−西吉田酒造 麹−麦麹・黒麹  原料−大麦
購入価格−\1,368(720ml)  購入年月 H20.1

 この「つくし全麹」はその名のとおり、麦麹だけを常圧蒸留してできた麦焼酎である。通常、焼酎造りは、1次もろみに原料となる芋や麦を加えた2次もろみを発酵させ蒸留するが、1次仕込みの麦麹だけで発酵させ、常圧蒸留する。そして、5年古酒をブレンドしたものが「つくし全麹」である。.このように記すと1度の手間が省かれたように感ずるが、そうではなく2次仕込みを省いた分、1次の麦麹が多量となり、麦麹をつくる手間と麦麹だけの醸成となりとても贅沢なものとなる。.
この焼酎は、年に2回の限定販売で、生産量は1.8Lが4,000本、720mlが6,000本だけだそうだ。しかも、特約店のみの販売である。 いつものようにロックでいただいた。グラスを回し、氷と「つくし全麹」をなじませて口に運んだ。口に入れたとたん。濃厚な麦の芳ばしい香りがふぁっと広がる。かなり重厚で濃厚である
口の中で転がすと、アルコールの刺激感は感じないが、わずかにアルコールのすっとする感じを覚える。ゆっくりとのどを通していくと、柔らかさのような感じを覚える。ここらは、5年古酒配合によるものなのか。印象的には、濃厚でインパクトある1本である。

蔵本−株式会社 喜多屋 麹−麦麹  原料−大麦
アルコール度数25度 購入価格−\1,260(720ml)  
購入年月 H20.2

7
 福岡県にある蔵本の「喜多屋」さんを見学に行ったときに、購入したものだ。蔵見学の様子は別項を参照してほしい。
この「吾空」、写真を見て分かるように、うっすらと琥珀色である。これは、大麦焼酎を樫樽で熟成しているため、色がついているのである。蔵見学に行ったときに樫樽が整然と何段も積み上げられているのを見たが、あれが熟成中の「吾空」だったのであろう。樫樽で3年以上熟成させたのが「吾空」で同じ蔵が造る芋焼酎の「尽空」とともに日本航空の国際線エグゼクティブクラスに搭載されているそうである。
 さて、ロックで味わってみた。グラスに注いですぐ口に運んでも、アルコールのつんとする感じを覚えることなく、するするとのどをとおっていく。柔らかくとても滑らかなのどごしである。口の中に、麦の甘くバニラのような香りと芳ばしい香り、さらに、樫樽からにじみた風味が調和して、幸福感に満たされる。これは、旨い。ゆるゆるとストレートでもよさそうだ。
 是非、一度は味わって頂きたい1本である。 
8
蔵本−西吉田酒造 麹−大麦麹・黒麹  原料−大麦
アルコール度数25度 常圧蒸留 購入価格−\2,421
購入年月 H20.1

 この「釈云麦」をつくる「西吉田酒造」さんは、福岡県の筑後市にあり、創業は1893年で、115年の伝統を引き継ぐ蔵である。「西吉田酒造」さんは、麦焼酎の醸造にこだわり、減圧蒸留や常圧蒸留での麦焼酎の醸成に力を注いでいる蔵である。
 この「釈云麦」は麦焼酎の中では、珍しい無濾過で、黒麹仕込みである。「釈云麦」のラベルは見慣れないデザインだが、これは、何でも梵字でアークと発声し、大日如来を意味しているそうである。大日如来の意味である「光り輝き、遍く照らす」にあやかろうとしたものだろうか。
 この「釈云麦」はギルドの商品で、「もぐら」「あやかし福助」等を取り扱っている酒屋さんで購入できる。詳しくは、「西吉田酒造」さんのホームページhttp://www.syoucyu.com を参照していただくと店名と住所も掲載されてる。
 さて、ロックで頂いた。口の含むとぱっと濃厚で芳ばし香りが広がってくる。香りを楽しみながらゆっくりとのどを通していくと、かすかな苦さの中に麦のやさしい甘さを感じてくる。芳ばしさ、苦さ、甘み、が絡み合って、「釈云麦」の世界が広がっている。のどを通ったあとも、香が残り、余韻も楽しめる。「兼八」もとても旨く似たような味わいたが、「釈云麦」は、より濃厚で、重厚な感じである。
 私は普段は、6本ぐらいの焼酎を開栓しているが、その中の「釈云麦」は自然と手が伸び、瞬く間に底をついてしまった。これも、是非多くの方に、一度は味わって頂きたい1本である。
9
蔵本−久保酒造場 麹−麦麹・白麹  原料−大麦
アルコール度数25度 微減圧蒸留 購入価格−\2,220
購入年月 H20.3

 「青一髪」は長崎県の久保酒造場さんが醸し出すこだわりの1本である。久保酒造場さんは、創業明治40年で造っているのは「青一髪」だけで、たった一人で造っていらっしゃるそうである。それだけに、数も限りがあるのだろう。取り扱いのある酒屋さんも少なく、私が住んでいる界隈では、わずか1軒の酒屋さんだけが取り扱っていいる。
 「青一髪」の由来は、瀬山陽の詩「泊天草洋」一節から、採られている。
 前置きが長くなったが、この「青一髪」原料に長崎県産の大麦を使い3年の熟成期間を経て、送り出されている。そんな手間暇をかけて、2,200円程とはとても安い。「青一髪」で特徴的なことは微減圧で蒸留されていることである。私が手にした「青一髪」の裏ラベルには、蒸留時期 2004年秋1/4 2005年冬 3/4 と記されていて、2度に分けて蒸留しているようだ。
 そんな、「青一髪」をロックで味わった。口に含むと、なんとも華やかで花園の中にたたずんでいるような香りに満たされる。麦焼酎の多くは、麦の芳ばしさ、麦チョコのような風味をしているが、この「青一髪」黙って出されると、麦焼酎とはとても思えない。芳ばしさはみじんもなく、柔らかでミントや花の香り、果汁のような味わいが調和良く合わさったようである。これは、個性ある1本である。味わいは、軽めで濃厚ではなく、食前や食中にも楽しめる。
 これは、是非、多くの皆さんに一度は味わっていただきたい1本である。麦がこんなに豊かになることを味わっていただきたい。
 開栓して、瞬く間に一升瓶が空になってしまった。これは旨い。やみつきになりそうである。また、近いうちに購入することになるだろう。1本は保管して、瓶詰め古酒にしてみようかと思う。
 泊天草洋 
   頼山 陽

雲耶山耶呉耶越
水天髣髴青一髪
万里泊舟天草洋
煙横篷窓日漸没
瞥見大魚踊波間
太白当船明似月
蔵本−八木酒造場 麹−米麹・黒麹・白麹・黄麹 配合
原料−大麦 ・アルコール度数25度 常圧圧蒸留 
購入価格−\2,380   購入年月 H20.3

10
 「悟空の眠蔵」は「侍士の会」開発商品で「八千代伝」や「熟柿」を造る八木酒造場さんに製造を依頼し、2006年に世に送り出され麦焼酎である。「侍士の会」の中で麦焼酎は今のところこの「悟空の眠蔵」だけである。
 「悟空の眠蔵」にはここに紹介している麦焼酎と芋焼酎とがある。芋焼酎の「悟空の眠蔵」は別項で紹介しているので参照されたい。 
 この「悟空の眠蔵」の特徴は、米麹を使い更に、黒麹を元に黄麹と白麹を麹造りの段階で配合しているところにある。簡単に配合といっても、素人には、分からない御苦労があることだろう。種類の違う麹菌を配合して調和をさせるには、大変な苦労があるのだろう。
 さて、いつものようにロックでいただいた。グラスに注ぎ、すぐに口に含んでもアルコールの刺激感を感じることがない。ゆっくりと舌の上を転がして少しずつのどをとおしていく。麦のもつ芳ばしさと甘みがふぁっと口の中に広がってくる。この感じは「兼八」や「釈云麦」と同じものであるが、大きく違うところは、濃厚な香りやこくでなく、やさしく柔らかな感じなのである。
麦の香りと芳ばしさを保ちつつ、くどくなく、柔らかな口当たりを表現している。この辺は黒・白・黄麹の配合と水の影響もあるのだろうか。
蔵本−西吉田酒造 麹−麦麹・黒麹  原料−大麦
購入価格−\2,310  常圧蒸留 購入年月 H20.4

 「つくし」をつくる西吉田酒造さんは福岡県の筑後地方にある。創業は西暦1893年というから110年以上の歴史と伝統をもつ蔵である。創業以来、乙類焼酎を造り続けている蔵である。また、福岡、大分、佐賀県は麦の生産地で麦焼酎を造るには、適した土地である。
 さて、この「つくし 黒ラベル」は常圧蒸留によるもので減圧蒸留の「つくし 白ラベル」があり、黒麹、白麹仕込みの違いでなく、ともに黒麹仕立てで常圧蒸留と減圧蒸留による違いにある。 
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 「つくし黒ラベル」は常圧蒸留によるものである。白も黒も5年以上、トンネルで醸成した原酒を配合しているそうである。実際に、ロックで味わった。グラスに注ぎ、香りをかぐと、麦の芳ばしい香りが入ってくるが、「兼八」や「佐藤麦」のように強い香りではない。グラスを傾け口に入れると、さらっとした口触りで、古酒配合の効果だろうかアルコールのぴりぴりした舌にさす感じやすっとする感覚を覚えない。ゆっくりのどをとおしていくと、麦の香りを感じながら、すっきりした印象である。わずかに麦の甘さを感ずるが、辛口できりっとしている。これまで私が飲んだ麦焼酎の中では、もっとも辛口だ。
 甘さを抑え、すっきりとキリッとして、しかも、麦の芳ばしさを楽しみたい方には、もってこいの1本だ。
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蔵本 さつま無双株式会社 麹−麦麹・黒麹  原料−大麦
購入価格−\2,100  常圧蒸留 購入年月 H20.5

黒さそりはギルドの焼酎で蔵本は「さつま無双株式会社」さんである。ギルドについては、詳しい情報がなく詳細は不明である。「黒さそり」の他、「竃」「もぐら」「あやかし福助」なども「さつま無双株式会社」さんが造っている。ギルドのとは深い関係があるようだが、この辺を明らかにしてほしい。
 さて、この「黒さそり」黒麹仕込みで常圧蒸留の後、三年間熟成させたものだそうで、封には「麦酎でもがつんときます」とある。
   いつものように、ロック。グラスに注ぎ、香りをかぐと麦の芳ばしい香りを覚える。氷が溶けきれないうちに口に含んでも、アルコールのとげとげしさを感ぜず、滑らかなのどごしである。この辺りは3年熟成の効果だろうか。ゆっくりに舌の上に転がして、のどをとおしていくと、ほのかな甘さの後にわずかない苦みを感じる。がつんとくることを期待していたが、「三段仕込み」や「兼八」「佐藤麦」と比べると、がつんとはこない。濃厚とは言えないが、軽めでもない、ちょうど中間と言ってよいだろうか。2,100円なら、充分納得である。麦の芳ばしさも楽しめるし、口あたりもよい。
向こうに見えるのは雲か山であろうか。それとも呉の国か。越の国であろうか。
水と空とが、さながら青い髪の毛を一本真っ直ぐに張ったようだ。
自分ははるばる京都から万里もあるこの天草洋にきて、今宵はここに舟やどりをするわけである。
夕もやが静かに小舟の窓をつつみ、太陽が西の海に沈んでいく。
突然大きな魚が、ひらりと波の上にはねたのを見た。
見上げる空には、早くも宵の明星が輝いており、月のような明るさである。
蔵本 重家酒造合名会社 麹−米麹・黒麹・白麹  原料−大麦
購入価格−\1,450(720ml)  常圧蒸留 購入年月 H20.8

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 「村主」を造る重家(おもや)酒造合名会社は長崎県壱岐市石田町に所在する。壱岐は麦焼酎発祥の地とされ島にもかかわらず6つもの蔵本があり、その一つが重家酒造である。壱岐で造られる焼酎を壱岐焼酎と称して、産地呼称が認められている。この産地呼称焼酎は他に鹿児島県の薩摩焼酎、熊本県の球磨焼酎、沖縄県の琉球泡盛のわずか3つである。この産地呼称を名のることができるよりどころは、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律、第86条の6第1項の規定に基づき、地理的表示に関する表示基準による。詳しくはこちらを参照してほしい。
 重家酒造さんはご主人と息子さん2人の家族で経営している小さな蔵である。「村主」は家族3人で手造りで醸し出されている。白麹の原酒と黒麹の原酒を3年以上寝かせたものをブレンドしているそうだ。
 いつものようにロックで味わった。これまで味わったことのない味わいである。この村主は長期熟成古酒とラベルに記されているとおり、古酒のもつなめらかさと穏やかさが表れている。口に含んでもアルコールの刺激感を全く感じることなく、とろっとした舌触りである。この村主は黒麹と白麹原酒をブレンドしているので、なるほど黒麹のもつ香ばしさと力強さと白麹のもつ柔らかで華やいだ特性をうまく調和させている。その味わいは、兼八や佐藤麦のような麦の香ばしさを強く感じることはない。また、青一髪のようなとても華やかで花の蜜を連想するものでもない。ちょうど両者を併せたような感じを受ける。麦の香ばしさを口の奥でほのかに感じながらも、甘い、バニラのような味わいや華やいだ香りを感じる。やはり、黒麹と白麹のブレンド効果なのだろう。
 グラスに注ぎ、味わいを確かなものにしようと知らず知らずに4合瓶だが、開栓して日を置かずしてなくなってしまった。「村主」はなかなか個性ある1本である。多くの麦焼酎を好きな方に飲んでいただきい1本だが、取り扱い店がわずか19店だけなので、近くに特約店がない方には入手困難なのが残念である。

蔵本 宮田商店   原料−米
購入価格−\2,500  常圧蒸留 購入年月 H20.7

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 初めての米焼酎の紹介である。
 わたしは、これまでほとんど米は飲んでいなかったが、今回、米焼酎の「宮田屋」を購入したのは、お気に入りの芋焼酎の「日南娘」や「銀の星」を造る蔵の焼酎であることやネットでの評判も良いので、1度は飲んでみたいと思ったからだ。
 開栓し瓶の口に鼻をつけ香りを嗅ぐと、日本酒を思い浮かべるような香りがする。ここら辺はやはり原料が米のためだろう。いつものようにロックで試してみる。
 氷が溶けきれないうちに口に含んでもまったくアルコールのピリピリとした感じがなく、まろやかである。とてもやさしく、しっとりとした感じで舌の上で転がすと、ほんわりとした甘みと果実を想起するような香りが広がり、すっと消えていく。わずかにまったりとした感じを覚える。旨いです。米焼酎なんかと軽んじる事なかれである。
 こうやって、米をしっかり味わったのは久しぶりである。今まで飲んだ米焼酎は、あまり香りもなく淡泊であり、さらっとした印象であった。しかし、この「宮田屋」は、特有の甘さと香りを楽しめる1本だ。これは、芋の他の焼酎も試してみたいと思う方に是非勧めたい。
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蔵本 藤居醸造合資会社   原料−大麦・麦麹
購入価格−\2,625  常圧蒸留 購入年月 H20.6

「特蒸泰明」を造る藤居醸造さんは、大分県の南西部である豊後大野市千歳村に蔵を構えている。創業は昭和4年であるそうだ。藤居醸造さんでは社長さん自身が杜氏をなさっており家族で手造りにこだわり、焼酎を造っているそうである。家族で手作りなので、年間生産石数はわずか約550石である。焼酎造りに欠かせない水は、蔵の西方にある豊後竹田の名水を使っている。
 「特蒸泰明」は、先にもふれたが手作りで丹精込めて醸された1品である。原料には二丈大麦、仕込み水日本名水百選にも選定されている竹田の水を用いている。そして木桶で蒸し上げ、もろ蓋での麹造り、蒸留は常圧蒸留である。
 そうやって醸し出された「特蒸泰明」をロックでいただく。口に含むとぱっと麦の芳ばしい香りとやさしくほろ苦い香りが広がってくる。味わいは、濃厚で、香りが鼻から抜け余韻を楽しめる。アルコールの刺激感がなく滑らかである。のどを通し終える頃には、麦の自然な甘さを感じてくる。これは旨い。味わいは麦の焼酎の代表とされる「兼八」と似ているが、「兼八」の方がより濃厚でほろ苦さが強調されているようだ。
 またまた、お気に入りが増えてしまった。「兼八」も旨いが、すこぶる入手しづらく高価である。「特蒸泰明」は手頃な価格で、取り扱いのある酒屋さんに行けばいつでも購入できる。これは、お勧めです。
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蔵本 (有)常徳屋酒造場   原料−はだか麦  常圧蒸留
購入価格−\1,240  購入年月 H20.11

 「道中」を造る常徳屋酒造さんは、大分県の宇佐市に蔵を構えている。創業は1907年で清酒と焼酎を造っていたそうであるが、1985年からは麦焼酎のみを造っている。
 この「道中」は特約店のみの販売なので、スパーやコンビニでは取り扱いはない。 
  いつものようにロックで味わった。麦の香ばしいいい香りとほのかな甘さが口一杯に広がってくる。結構、濃厚な味わいである。濾過を弱めにしているそうであるが、その効果であろうか。麦チョコのような香ばしさがぐっと押し迫ってくるが、アルコール感がなく口当たりも大変よく、杯を重ねてしまいがちになる。喉を通したあとも、麦の香りが残り余韻が楽しめる。麦焼酎の味わいを存分に楽しめる1本でだ。
 同じく大分の麦焼酎で有名な「兼八」と、比べると似た味わいだが、「兼八」の方がより麦のほろ苦さや香ばしさを強く感じる。一方、「道中」は香ばしさを十分に楽しめるながらも、ほんわりとした麦の甘さも楽しめる。やや、甘口の感がする。「兼八」は入手が難しいが、「道中」だと特約店に行けば手に入れることができ、価格も安く旨い麦焼酎であるので、多くの方に勧めやすい。